式典実行委員会の皆さんへのメールです
発信元: [H931547] 五堂風人さん
題名: 親睦会報告
皆さん、こんばんは。
五堂風人です。
親睦会、楽しかったね。
結果報告書いてたら(話してたら)、ついつい長くなってしまって、
ML に出すのが憚られるほどになっちゃった(^^;
仕方ないから友達に頼んで、Web にのっけてもらったんだ。
URLは
http://www3.justnet.ne.jp/~s-mish/hourai/index.html
だよ。
このメールでは、その最後の部分だけ送らせてもらうね。
あっ、前半部は上のページにあるから、
暇があったらそっちを先に読んでね。
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17:30AM
午後の探索はとんでもないものだった。砂浜の地下に眠る巨大遺跡で、か
のイ○ディ博士も真っ青になるような大冒険をする羽目になったのだ。そし
て行き着いた先にはなぜかアルバ皇帝が。さらにその奥に、目的の黄色い袋。
アルバ皇帝が何か言ったようだったけど、そんなことはおかまいなく僕らは
その袋を奪って一目散に逃げだした。
どれぐらい走っただろう。狭かった通路は徐々に広がり、傾斜は上りにな
っていった。どうやらこのまま地上に出られるらしい。そこまで来てようや
く僕らは歩速を緩め、歩きながら入手した黄色い袋をまさぐった。中から出
てきたのは『ヨベール君』。付属の説明書によると、どうやら使い魔を召喚
して、扱き使えるらしい。
僕らは上り坂をゆっくりした歩調で登りながら、さて使い魔に何をさせよ
うとか、地上に戻ったら何を食べようとか、そんな下らなくも愉快な会話を
楽しんだ。そして話が今日一日の出来事に及んだとき、ふいに周囲が赤く染
まった。やがて視界が開けた先。そこは一面、真っ赤な世界だった。夕焼け。
そう、夕焼けだ。朝から空にうっすら張りついていた雲はいつの間にか消え
去り、燃えるような夕日が、今まさに砂乃場海岸とは反対の海に沈もうとし
ていた。
突然、穏やかで、それでいて鮮烈な記憶が、僕の頭の中を吹き抜けた。
…まだ僕が幼かった頃。夏の日暮れは遅く、僕たちに終わることのない遊
び時間を与えてくれた。僕たちは野球やサッカーやなんとも形容のつかない、
思いつきのあそびや、何とかゴッコに興じて、時間のたつのも忘れていた。
遊んで遊んで遊びつかれて、それでもまだ遊び足りなくて遊びつづける。そ
れでもやはり時間は過ぎ、永遠の遊び時間を約束してくれた太陽はその瞬間
にあっさりと僕たちを裏切る。
黄昏の一瞬。一日の終り。
誰かが言った。楽しい時間は早く流れるんだ、と。だから思った。じゃあ
楽しくない時間を過ごせばいいんだ、と。一時の楽しみではなく永遠の退屈
を。子供らしくない考えだ。今ではそう思う。でも明くる日も、僕は「一時
の楽しみ」を選んだ。結局、僕は好きだったんだ。一日の疲れと充足感と、
それでもまだ満たされない思いを抱く、あの一瞬が。
いつから失ってしまったんだろう。
なぜ今になって、そんなことを思い出したんだろう。
「おーい、早くしないとみんな帰っちゃうぞ!」
遠くのほうから呼ぶ声で、我に返ると、僕は赤い光に染まった砂浜に一人、
立っていた。みんなは僕を置いて引き上げはじめたようだ。あれは島根君だ
ろうか? 顔も見えないような距離で手を振っている。
「ちょっとまってよ、すぐ行くからさぁ!」
僕はそう叫んでから、もう一度西の空を見上げ、かなたに沈む夕日を見た。
その時、ふっと、夕暮れ時の吹き下ろしの風が、僕の鼻先を通り抜けていっ
た。宇津帆島の夏は長い。ひょっとしたら年中夏といっても言いのかもしれ
ない。しかしその時、風が僕に運んできたもの。それは紛れもない、夏の終
わりの匂いだった。
僕はすぅっ、と一つ深呼吸して、みんなのところへ走り出した。
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2年戊午組 [H931547]
五堂 風人 (Kazato GODOU)
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